に投稿 コメントを残す

イワテヤマナシの講習会

イワテヤマナシの花

10日から2週間も早まって植物の生育が進んでいます。雪解けが早くてその分作業時間を長く取ることができるのはありがたいことでしたが、それにしても作物の進みに作業が追いつかない、という状態が続いています。とはいえ天気が比較的良く暖かい日が多いことは助かっています。昨日今日(5/8,9)はとても寒い東北でしたが。

いつも5月15日頃に満開を迎える当園のやまなし、「ハンベエナシ」も5月2日に写真のような開花最盛期の姿を見せてくれています。「イワテヤマナシ研究会」については何度か記事に書かせていただいておりますが、上のハンベエナシを植え付けたのは2012年、神戸大学の片山寛則先生から譲られた、西和賀町由来の優良なやまなしの枝を穂木に神戸大学で台木に接木して育ったもの(当時2mくらい?)を逆輸入して育てたという経緯のなしです。土着の優良な梨ですから、別に県内他地域のやまなしの取り組みに対抗するわけではありませんが、この地域では何よりこの梨を栽培することに意義もあるし、ここの特色となればという願いを込めています。左から3本目は幼少期に熊にのしかかられて主幹が折れ、その分小さいです。一番右は交配用の別品種(「サネナシ」という種がないイワテヤマナシ)で、今年やっと花が咲きました。ハンベエナシに花粉が届いてくれますよう祈っています。

そうしたやまなしの取り組みを10年以上細々と続けてきたのですが、去年くらいから周囲に徐々に、というか一気に賛同者が出てきてくれて、岩手県内の初発地の九戸、次いで水沢、に続き3番目の取り組み産地と言っても良いようなグループに育ってきていて、とても嬉しく思っています。

 

接木講習会

これまで全く私だけ孤立していたこちらの町でのやまなしの栽培ですが、何か弾みがついたかなと思うのは、イワテヤマナシの研究者、神戸大学の片山先生ご自身が大学を早期退職なされ、この春から盛岡へ移住し、まさにイワテヤマナシの生産と加工に自ら先頭に立って取り組んでいこうと転身されたことが大きいと思います。そして実際4月20日に当園のやまなし園にもお越しいただいて、これからの生産の要となる「接木」作業の講習会を開催することができたのでした。これには町内からだけでなく県内の各地から、そして先輩に当たる水沢のリーダーにもご参加いただいて、共に技術を学んだのでした。

神戸大学にはいまも400本以上のイワテヤマナシが演習林として植えられていて、寒天出張が終了した際の2月に訪れた時に見学もしてきましたが、2012年当時から年月も経ち、木は成木になっていて、当時のように苗木レベルの木ではないため、掘り起こして搬送できるようなしろものではありません。ただ、枝は自由に切り運ぶことができますので、それを穂木にして、購入した台木に接いでやまなしを育てるということになり、それ以外に生産の道はありません。種の栽培では時間もかかり、また性質もばらけます。

台木(購入したマメナシ台木等)と穂木も2月の見学の折に私が軽トラで搬送してきて、それを雪の中で2か月やりすごし、4月初めに雪が消えると同時に植え付けて、そして4月20日にその台木に「ハンベエナシ」や、次いで特に私が惹かれている「和山なし」の穂木を先生の指導のもとに接木し、いまは経過を見守っているところです。

4月20日はとても寒い日でした。。そもそもこの西和賀は他の岩手県内の産地に比べ群を抜いて豪雪の土地です。小さい台木に穂木を接いで、高さは30cmくらいです。台木を雪消えの時に植えた際も、雪が多くたまる場所はとにかく避けて、結局12年前にハンベエを植えた同じ場所、斜面から上ってすぐの畦畔=雪がたまりにくい、の区域に台木を植えました。いまは接木も終わって、来年の春までここで育ってもらって、それから接木を行った各人に掘り起こして持って行ってもらいます。右の写真で斜面が分かりますが、その斜面の下側は雪がすごくたまります。この底はブルーベリー園なのですが、いつも春先にはどんなに雪囲いをしてもかなりバキバキに折られています。まあブルーベリーはしっかりと剪定するのが大事ですが、最初の植えたての幼少期の苗木にとっては過酷な環境です。やまなし(台木)はそれを避けるために狭いけれども雪が少ない区域を選んだ次第です。12年前のハンベエナシ定植の時は、1種では実が着かないので共に異種の交配用にサネナシを同梱してもらったのですが、雪が深いところに植え、翌年んに枯れてしまい、後にまた送ってもらったサネナシは今度は雪の少ない区域に並べて植え、枯れずに育っています。今年やっと開花し、嬉しいです。

 

接木の仕方

神戸大から持ち帰った台木は2種類あり、左は購入した1年目の台木(園芸業者が一般の現代のナシ栽培者の接木用に種から育てた木)、右はそれに接木をしたのだけれど穂木が活着せずに接木に失敗し、台木だけは根もあるため上をちょんぎられても生きていて成長しますので、その分大きくなった何年目かの台木です。小さい台木は左のように接木ナイフで中央付近に切れ目を入れ、右のように太い台木は木の皮のすぐ内側の成長し太っていく部分に切れ目を入れ、そこにシャープに削った穂木を差し込み、接木テープでぐるぐる巻きに密着し、完成です。穂木の成長の層と台木の成長層とがぴったり合わさることで接木が成立します。ので、右のような太さの違う台木のど真ん中に切れ込みを入れても接木にはなりません。穂木は2つ芽を残して切ります。芽が動いていない状態ですので、早めに採取して雪中および冷蔵庫で保存しておきました。

 

やまなし接木

本日5月9日の接木苗の様子です。まだ成否はわかりませんね。台木そのものは芽吹きが見られ、ちゃんと生きております。問題は穂木がどうか、です。左は成木のハンベエなしの枝を切って、高接ぎをした例、中は太い台木に2本穂木を接いだもの、右は細い台木に同じ太さの穂木を接木したものです。どうか活着してくれますように。

 

 

七内川の釣り

接木講習会は懇親会・宿泊も含めての開催でしたが、翌日は天気も良く、家の前の七内川での釣りをする参加者の姿も。とはいえ、この辺りは連日釣り客に攻められていて、なかなか釣れてはくれません。。私はすぐそばに住んでいながら、釣りをする余裕はなかなかありません。

 

鹿肉とチキン料理

ちなみに、懇親会ではジビエ料理を提供しました。写真左は鹿の焼肉で、いちばん美味しいとされる太ももの肉をお出ししました。写真を撮っていませんが鍋料理と、そしてお好み焼きも出しました。右は翌日に釣りをした釣り名人の方と近くの「カタカゴヒルズカフェ」でランチしたメニューです。チキンのガーリック料理は美味しいです。大変おいしくて見た目も美しいですが量が少ないのは難点で、大盛りとかの対応はありません(意識高い系?というのとは違うかもですが上品質のお店です)。女性向けですね。ここは有名なカタクリ大群落の入り口にあり、今年は今回の接木の翌週、連休の前半が見頃だったでしょうか、賑わったはずです。「カタカゴ」は「カタクリ」の古語だそうです。

 

イワテヤマナシの花近影

やまなしの蕾の近影ですが、本当にやまなしの花は美しいです。この花の時期に観に来られる方もいて、花の美しさもまた、やまなしを育てる魅力の一つです。桜の花見だけでなく、やまなしの花見もありです。余談ですが、秋にこのやまなしを囲んで酒を酌み交わしたというような話をもう亡くなってしまった古老から聞いた記憶があります。「ケカズナシ」とも言われるイワテヤマナシですが、救荒食とも言われます。これでケカズ(不作)の時に飢えを凌いだ、という意味なのか、それともケカズの時でも実をならせるよ、の意味なのか。。確かめたいと思います。

 

一本桜2024

いつも5月5日のこどもの日前後に近所の美しい一本桜の写真を撮影しています。今年はこれも大幅前倒しで、4月26日です。りんどうの芽かき作業はそれ単独で1か月かかるいつも大変な春作業なんですが、この桜の開花を待ってスタートしていました。でも今年は間に合わない。実際芽かきは暦通りの5月6日からのスタートになっています。この桜も年々衰えが見えていて、昔のように綺麗な円形の開花ではなくなってきていて、寂しいことです。

 

プール枠

水稲作業も始まっています。3月下旬にハウスを除雪し、下部のパイプを設置してビニールを掛け、地面の麦や稲の脱穀で出た殻を掃除して、整地をしプール枠を設置します。

 

播種機

今年は播種機を譲られまして、電動式の播種部分の装置を通過し、その後すぐに覆土も行うという流れになりました(覆土は手動のハンドル操作)。

 

水稲苗2024

5月9日時点の水稲苗の状況です。近所では代かきも始まっています。岩手の内陸部平野では田植えです。暖地の田植えとこちらの田起こし代かきが同時期になります。今年は当地でも田植えは早まりそうですね。

タラノキ園では、地上へにょきっと現れたヒコバエを探しスコップで掘って所定の畝位置に定植する作業を行っています。十分に需要に応えるためにタラノキ園から多くの穂木を収穫し、来春の出荷に備えたいです。