井戸を掘る

井戸1

農村に住むためにはハード面の投資が並大抵ではありません。電気・電話が来ていない地域に家を建て住むことはまず断念すべきです(ちなみに沢内は携帯電話は圏外です…)。

家を建てる場所が決まったら、宅地への転用手続きにかかるとともに、建築に着手する前に井戸を掘っておかなければなりません。そこで、97年12月27日に行われた、わが家の井戸掘りプロジェクトをご紹介します。

最大級のユンボ。購入した農地の宅地予定部分近くに、狙いを定めて井戸掘りに着手する。水が出ることを祈りながら…

 

井戸2

井戸を掘る場所は、家屋内に設置したポンプからなるべく近くにします。ユンボで大穴を空ける大工事なので、家をぶっ壊さないよう、建てる前、できれば渇水期である冬期間に行います。しかも雪で覆われる前に、という微妙なタイミングが求められます。

近所のおじいさんは、朝、水が出ることを神様に祈ってくれた…。それほど運を天に任せるようなこと。地中の水脈のことは人知では想像できないのだ。その甲斐あって無事水脈に当たる。この水を飲んで生きていくんだと感慨もひとしお…

約8メートル掘り、待望の水が確認。確率は五分五分くらいでした。掘ってどうしても水が出ず、そのまま埋め直さざるをえないという結末の可能性も、否応なしに頭をよぎる…。

 

井戸3

水が確認されると、それが本物の水脈であるか確かめるため、土木用ポンプで大量に汲み出し、水が切れないかどうか待つ。

ドリルでヒューム管(太さ50cm長さ2mくらい)に穴を空ける。この穴から水が内部に浸透してくる仕組み。

 

井戸4

本物の水脈であることが確認されると、埋め戻しの工程に入ります。まず、ヒューム管に水を浸透させる穴を空け、クレーンで垂直に降ろす。次に水のたまる空間を少しでも広く作るため、近くの河原で拾ってきておいた石(大きいほど良い)をヒューム管内外にどんどん投げ込む。あまり塞がらないうちにヒューム管の中にパイプ(安価な塩ビ管の方がかえって耐震上も良い)を入れる。これは家庭まで連なる水道管で、やはり先端部にはドリルで穴をあけることで、先端の穴以外からも水が入ってこれるようにする。引き続き石を投げ入れ、ヒューム管の上端に蓋をする。蓋をする前に炭を投入する。蓋の中央には穴があいていて、ここから地上まで水道管(塩ビパイプ)が伸びていく。

管を支えつつ戻される土砂に当たらないよう注意を要する危険な工程。

一人下に降りてパイプを手で支えつつ、上からはユンボが土砂の埋め戻しをする。パイプの先端部分を地上に出して、井戸掘りは完了。あとは建築時の水道配管時に接続する。家の方は、翌98年5月上旬に着工、6月下旬に完成しました。

 

井戸5

塩でお清めになります。

 

井戸ポンプ

家屋内に設置した揚水ポンプ。蛇口をひねったときの水圧の変動を感知してその都度汲み上げていく。蛇口を締めればポンプは止まる。

井戸の開通を祈り、関係者で打ち上げして終わる。この後、家の着工までの4か月間、雪の下で春を待つ。春に、無事水が出てくれるだろうか…(無事出ました)。

井戸掘りは大変な心労を伴い、この後体調を崩し、2日休みました。出るか出ないかわからない工事に10万円以上かけ、しかも掘る人、石拾いに出かける人、他の機械等の段取りをする人など、協力者が必要なこと。彼らのおかげで無事、成就しました。