山里歳時記

 

 

四季折々の風情ある話題が豊富な奥羽の一年。季節ごとの山里らしい出来事をかいつまんで辿ってみます。


■春一番作業はハウスの除雪から

ハウス除雪例年、積雪は4月上旬現在で多いところで1メートル以上(風の加減による)。雪が積もっていれば仕事にならず、まず雪をどかすことが最初の農作業だ。黙っていてもいつかは消えるものだが、やはりジッとはしていられないのが農家の性分か。水稲や花の育苗に使うハウスの部分のみでも何とか除雪を始める。しかし払った上にまた降ってくることも。冬の間なまった体をまずウォーミングアップに良い。写真は機械を借りてやっているが、ふだん私は全部手で掘って出す。(4月上旬)

■春の使者到来

福寿草群生福寿草アップカタクリ

 

 

 

 

 

消雪後、田んぼの脇にいち早く咲き始めた美しい福寿草(4月中旬)。都会の方ではとっくに終わっている頃に咲くのは貴重な価値あり。本当に心がなごむ…。下旬ともなればカタクリが一面に。


■チャグチャグ馬ッコ

チャグチャグ馬コ近くで見る農耕馬は迫力満点。ちゃぐちゃぐと鈴の音を響かせて…

岩手の初夏の風物詩「チャグチャグ馬ッコ」。派手な衣装に身を包んだ馬ッコたちが100頭近く、盛岡近辺を練り歩く行事。全国ニュースで見られた方もあるかもしれません。盛岡市街の大通りにて、6月15日。このあと神社参りして温泉に入ったりしてくつろぎの一日をすごす。「オッキリ休み」(田植え終了後の農作業お休みの日のこと)はとにかくのんびりとすごしたい。

馬ッコの前座には岩手の伝統的踊りである「さんさ踊り」のパレードも。子どもたちが乗ってゆっくり歩く馬っこの列。そのあとには馬の「落とし物」を掃除して歩く係員も続く。


■巨大イワナが息づく山里

イワナこっちへ来てから釣りの暇がなかなかないが、それでもたまにイワナをもらうことも…。まな板に載せてビックリの大物。シーズン外だし沢で手で捕まえたらしいのだが、もし釣れたのであれば、どんな引きだったか考えるだけでゾクゾクする。大きいまな板の枠を証拠に残して撮影。一匹で十分すぎるおかず量になった。この撮影時はまだ生きている。

■熊出没す

岩手県は熊出没のニュースが多いが、不思議と沢内では騒動になる話をあまり聞かない。おそらく都市近郊部と違って、山が豊富であることなどから、うまく共生が図られているのではないかと思う。それでも、たまに近所でも熊が出没したという証言があり、熊そのものを見たという例もあることはある。ある家では生ゴミを入れるコンポスターを漁られ、ある家ではりんどうの畝をネットや支柱をなぎ倒しながら横切ったという。とうもろこしを白昼食い散らかして行ったという家もあった。わが家でも田が若干の被害に遭ったりして、10株前後が食い荒らされた。

冬に備えて猛烈に食べる秋には、特に栗を狙って里への出没が多発するが、10月初め頃隣の家でも連夜、栗が食われており、マタギの人が調べに来た。最近は鉄砲だけでなく、ドラム缶でしとめる罠も行われるようだ。これだと夜中見張っていなくても良いのだ。

りんどうの収穫時、箱入り本数に数が数本足りないというときなど、日が暮れてから車のライトをつけて山ぎわの畑へ取りに行くことがあるが、結構勇気を要するものだ(クラクションを鳴らしながら農道を進むのだ)。

別に稲や栗を多少食われてどうということもないが、家の近くを夜間うろうろしているかもしれないことが多少気になるのは確か。わが家も栗の木を植えた。何年か後には深夜の訪問客が来るかも知れない。熊は頭が良く、自然界のことはもちろん人間たちの様子も良く窺っているという。「あの新しい家では栗の木を植えたそうだ」という情報もすでに伝わっていることであろう。(10月中旬)

■秋はきのこのシーズン

栗の季節が終わる頃には熊たちは深い山の中に戻って行くのでした。そしてこの頃になれば最高のきのこと私は思う<シメジ>が秋の最後を飾る。その部屋全体に広がる香りは筆舌に尽くしがたい。

なめこなめこ採りそうこうするうちに、遅ればせながらわが家の植菌したなめこがぞくぞくと伸びてきた。原木に植菌したこのなめこは、市販のものと全く異なり天然に極めて近いなめこだ。鬱蒼とした森林の生態も冬の厚い根雪も一役買って美味しいなめこを育てます。一度にはとうてい食べきれる量でないので、加工場に委託して缶詰にしてもらう。


■冬の遊び、ホッピキ引き

ホッピキ引き

古くから小正月行事として楽しまれている「ホッピキ引き」。夕ご飯を食べてからおもむろに公民館に集まって茶菓子やみかんを食べながら興じるゲームだ(何故かいつもと違って酒は飲まない)。至って単純で、先にコインがついた紐を引けば当たりで、景品がもらえる。コインといってもここらでは50円とかではなく、寛永年間の銭である。やってみると次第に夢中になってくる。景品をゲットする意気込みというのは餅まきと通ずるところがあり、結局ヒートしてしまうのだ。

■ほっとするね、雪明かり

雪あかり2月になると、あちこちで見られる雪明かりの雪像は、積み上げた雪に穴をあけ、小さなろうそくを灯す冬の風物詩。ほのかな明かりが暗闇にぼんやりと浮かぶ姿は幻想的だ。マデな家だと個人で立派な像を作るが、うちのようにはずれにある家だと通り過ぎていく人も少ないし、まずもっぱら人のを見て楽しむばかりだ。