説明
農薬・肥料不使用の自然乾燥米を栽培しています。

2025年はこの2年続いた7月の長雨がなく、その後8月も高温傾向で経過したため、登熟が早まり、稲刈りも1週間程度早まりました。豊作の期待もありましたが、6月の低温で分げつが進まず茎の数は少なめで、かつ細い気もします。冷涼地であり自然栽培ですから、慣行栽培のようには穫れませんが、低タンパクの風味あるお米に仕上がってくれればと願います。9月になり雨も多くて稲刈りには難儀しましたが、ハセ掛け期間中も含め夜温の低下もあって寒暖の差から米には良い味わいをも与えてくれればとも思います。
栽培ですが、農薬・肥料不使用の自然栽培になります。背負式刈り払い機に装着するタイプの除草機を中心に、初期のチェーン除草や、中干し直前の下駄踏み除草をいろいろ組み合わせています(チェーン除草は今年は使用しませんでしたが除草機は最大で5回かけました)。
日本海側の米どころは雪国でもあり、北国では晩秋は気温も低く、雨にも悩まされるため、天日干しは容易ではなく、米の乾燥が思うように進まない傾向があります。乾燥も段階を設けており年内までに食べていただく新米時期限定の17%弱の高水分米、来年前半まで貯蔵する16%、来年後半の夏季に出荷する15%米としております。天候を睨んでの米の脱穀のタイミングは難しいですが、毎年好天を祈りながら、稲作最後のこの外作業を進めております。今年も稲刈り時からハセ掛け後に周期的に雨が続き、また連日熊に食べられてやきもきさせられましたが、今年も無事脱穀し取り込むことができてホッとしています。なお、近年特にカメムシによる斑点米が増えていて、殺虫剤を使用しない農法としては大変苦慮しています。今年は近隣の大規模農家法人に色彩選別を依頼をすることにしました。連日の雨続きで大農家さんはまだ稲刈りが終わらず、その農家の作業終了を待って11月上旬に実行できる予定です。現在も新米出荷はできますが、11月10日頃よりの色選米での出荷をお勧めしたく思います。
なお育苗の土は県内「花巻酵素」さんの有機質肥料入りの「自然育苗培土」(有機JAS認証取得)を購入使用しております。肥料の使用はこの育苗培土のみになります。
2025年は3品種での稲作となりました。気温水温の低い冷涼地という条件を考えた時に、県や国が推奨し新しく開発されている多肥栽培を前提とした短稈品種では農法に合わないということを農家として痛感しています。多肥により風雨で倒伏したりすることのない自然栽培の農法にとっては、推奨されている品種とは真逆の長稈種で、冷害に強い特性を持ったお米が望ましく、それらは結果的に古い在来品種でした。その例として2021年に「亀の尾」、2023年に「ササシグレ」を導入し、従来からのと「ひとめぼれ」を合わせ3品種で作付けしています。また岩手県で「銀河のしずく」という品種を開発し、上記3品種よりも耐いもち性が高いことから、種苗の配布が始まれば導入したいと思っています(現在は当地区は作付け対象外地域になっています)。ササシグレにつきましては、味が良い長稈種で自然栽培での作付けも多い米ですが、ササニシキに座を譲った歴史が示すようにいもち病に非常に弱く、低温で冷水・比較的多雨のこの地域では困難な点も多く、作付け面積は少量にとどめる予定です(魅力的な品種であり栽培は続けます)。長年作付けしてきた「いわてっこ」(当地域での推奨品種)については短稈で無肥料栽培では収量も出ず、かつカメムシ害にとても弱いため作付けを休止しています。
岩手県内で長年主力になっている品種です。 寒冷山間地である当地は本来推奨される適地ではなく、年によっては未熟米(屑米)が多い形になりますため、作付け面積はそれほどは増やせませんが、少肥施肥でも割合と収量が上がる、どちらかといえば長稈のお米です。 タイミングがずれるせいかカメムシの被害は割合少ないです(年によります)。岩手では「銀河のしずく」や「金色の風」などの新品種が出てきていますが、自然栽培向きとは言えず、ひとめぼれは割合自然農法にも合った美味しいお米として続けていきたいと思っています。ササシグレほどではありませんがいもち病に弱いのが難点で、米ぬかすら投与は控えて完全な無肥料栽培にしています。
自然乾燥し、氷温の貯蔵をしています

野外とハウスのハセ乾燥: 全量ハセ掛け天日干し栽培をしておりますが、特に翌年の夏期シーズンに出荷する米のために、亀の尾のみになりますが小さい田1枚約7aの量を最初から小さいですがハウスの中で雨に当てずに乾燥させています。金属の稲架台を使っています。これにより野外では困難な水分15.0%を達成し、翌年の夏期にお客様の元に届いてから食べ終えていただくまで品質の劣化がないようにと努めております(野外の通常のハセ乾燥は16.0%を目標に脱穀します)。
稲扱きのタイミングは難しいですが、好天が続いた、天気が崩れる前の最終日に脱穀ます。その後改めて水分計でのチェックをし、籾はメッシュの袋に取り込んでおりますので、適宜200Wの扇風機送風乾燥を補助的に使い、水分が高い場合は基準の16.0%の水分量(翌年夏用のハウス乾燥籾は15.0%)にまで下がるよう調整しています。
太平洋側でしたら初冬までずっと外に干していられるのですが、日本海側の気候では10月下旬になれば冬型が続いて低温多湿の雨や雪の日々になり、日照は望めないのがほとんどで、つらいところです。
翌春出荷用は氷温籾貯蔵で: 脱穀・籾摺りした玄米の6割は積雪期のうちもすぐに出荷できる住宅内作業場所の木枠内に貯蔵して随時出荷を始めますが、春以降の出荷予定分は、別棟の作業場内に設置した冷蔵庫にて−1℃の温度に保つ氷温貯蔵を行っています。この一定の庫温でじっくり熟成した「氷温米」は4月以降に+12℃に設定し直して秋まで冷蔵供給させていただきます。夏の一番暑い時期は上記ハウス乾燥で最も水分が下がった玄米(亀の尾)を供給するようにしています。氷温熟成米は「日本氷温協会」のお墨付きもあり、食味・鮮度上の好結果が得られていると感じています。
新米は高水分米から出荷します: 新米の時期には、全ての品種ではタイミング上できませんが、一部ハセ掛け後およそ1週間で脱穀した水分約17%の高水分米をお届けできるよう努めています。みずみずしくてより新米らしさが味わえます。慣行のJA出荷米等では14.5%乾燥出荷が指導されているようですが、それは翌年の夏以降までの出荷を見越した乾燥で、仕方ないとは思いますが、当園では出荷時期に応じて対応できますので、新米出荷後の2か月くらいのうちに食べていただくという限定で高水分米出荷を実施しており、在庫が尽き次第終了します。その後は通常乾燥米をお届けしますが、特に春以降の気温が高くなる時期は到着後はできれば冷暗所に貯蔵していただいて、また、しまいっぱなしではなく日々開封して食べていただけたらと思います。特にアミノ酸の豊富な玄米は白米以上に悪くなりやすいため、玄米の貯蔵は特にご留意をお願いいたします。
栽培を支える農具たちについて

籾摺り選別のラインは出荷するお米の品質に大変重要な要素です。せっかく良い田植えや稲刈りの機械を持っていても、お米の品質は最終的にここで決まるといっても過言ではありません。特に玄米でのご注文が多い当園の場合は、精米された米では米ぬかとともに脱落する籾米が限りなく除去されていることが求められます。2015年秋より、古いライスグレーダー&計量器を新型の選別機内蔵の計量器に更新するに当たって、古くなっていた籾摺り機の方も選別機と同タイプのものにセットで切り替えました。この籾摺り機も天日干しの米に向いているとされるインペラ式になります。それを1.90mmの LLの網で選別します。機能的には籾摺り部分は旧型と同等ですが、籾摺りの原理はより新しい方式になっています。
また、精米も無料で応じております。7分付きとか も目視しながらですが可能です。 循環式タイプで米にやさしい熱を与えない方式になり、天日干しならこれだと言われ農業開始年に購入しずっと使っています。数年前にモーター部分を新品に交換しました。写真左側の秤は「カンカン」と呼ばれる分銅を用いるタイプで、現在のデジタル計量機と異なり故障がありません。

お米の食味を上げるのは米ぬかが適しているといわれます。地域内で精米された米の米ぬかを採取して水田やにんにく畑に施用しています。ただし現在はいもちに強くない品種が作付けになっていますため米ぬかも施用をせず、経過を見ています。実際、この数年で水稲は完全な自然栽培に移行していて、米ぬかは現在ではにんにく栽培にて多用しております(盛夏の休耕期と根雪前の畝全体への施用)。
米ぬかのさまざまな利用法が紹介されていることから、昨今はなかなか入手し難くなっていますが、全量が当地域より集積できますので、この奥羽の里西和賀町沢内産で、100%地元産素材となります。
またハセ掛け乾燥では稲わらを田から持ち出すことになり、そうではなく有機物として稲わらを田に戻すことも重要なことで、このためにわらカッターを使い、全部というのは労力的に難しく多くは畜産農家に引き取ってもらっておりますが、毎年田を決めてハウスで乾燥した亀の尾脱穀後の稲わらを全量投じています。秋の多忙な時期でしかも結構機械の移動に力がいりますが、気合を入れてやり切ります。

天日干しを行い続けるためには、ハセの柱を維持することが必須です。何十年も立ち続けた柱は風雨の侵食を受け、積雪と風雪に押され、だめになっていきます。適宜更新していくことが大切です。全国的には刈り取った後の田の中にハセを組む方式が主流ですが、こちらでは農道脇に通年立ち並んでいる柱に、稲刈りの始まる前にあらかじめ横に渡す棒(ホケ)を渡してハセを組んでおくという方式になります。なぜあらかじめハセ柱を埋めておく方式なのか不明ですが、おそらくは秋が短く、また晩秋は雨も多くなり雪も近いという地帯にあっては、稲刈りが終わってからおもむろにハセを田の中に組み立てるという悠長なやり方はとてもやっていられなかったのではないかと思っています。雨が降れば田の中は水も溜まったりしますしね。
柱は1m穴を掘って長さ4mの木を立て埋めるのです(大変な作業です)。バールを使って皮を剥ぎ、スコップで掘れるだけ掘ります。スコップだけでは深さが足りず、最後は手を伸ばして潮干狩り用の三本爪で土を掘り柄杓で土を取り出します。軽くて丈夫な栗の木がハセ柱に適しており、森林組合で入荷した折に買うことができます。なお、ハウスの中や、外のこのハセが足りなくなった時は、金属の三脚にパイプをかける稲架台を補助的に使用します。風情には欠けるかもしれませんが、便利です。








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