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古民家でのアート職人展示会、夏の休日

ツキザワの家

結局、梅雨明けがないままに梅雨前線がそのまま秋雨前線になってしまった北東北では、かつてないほどの日照のない多湿の夏(?)が過ぎて、ここに来て比較的日差しのある穏やかな秋を迎えています。とにかく、大幅に遅れていた稲の生育を挽回して欲しく、しばらく気温高めという予報に期待をしています。にんにくも小麦もお盆りんどうも、そして稲も1週間遅れという異例のシーズンです。唯一彼岸りんどうだけはぴったり当たりましたが、それはススキとかと同じで寒さが来ると開花促進になるので、かえって冷涼さの現れです。

8月上旬はお盆用りんどうの出荷に追われておりましたが、それも一段落したお盆最中の時期に、写真家の瀬川強さんたちが手をかけて修繕された「ツキザワの家」に初めて行って来ました。鉄工と木工の職人の2人展を見学するためです(8月13日)。ツキザワの家は「砂ゆっこ」のすぐ近くにあります。

 

アイアン木工コラボ机

鉄工の「山のうえアイアン」氏と当園サイトでも紹介している木工の竹澤氏のコラボの作品展です。本当はもっと早くに行いたかったようなのですが、春の竹澤氏ウッド工房の火事による消失という出来事があって、その後片付けや工房の再建を進めながら、ようやくこの日を迎えたのでした。竹澤氏の再建の作業にはアイアン氏のご尽力もあり、そうした協力関係の絆があって、この古民家での開催に至ったのでした。

 

山のうえアイアン

こちらはアイアン氏の鉄工芸品です。

ウッド工房ブナの森

こちらは竹澤氏の木工製品。

アイアン小品

古民家の調度品にもさりげなく小品が展示されています。

 

ツキザワの家囲炉裏

これもツキザワの家の備品の囲炉裏で、座って談笑も。

 

襖絵

さてこちらは廊下を歩いて奥の間ですが、素晴らしい絵が襖に描かれています。西和賀の早春から冬までの四季の移ろいを描いたそうです。こちらで大きいサイズもご覧いただけたらと思います(左の切れている部分はこちらに)。千葉県在住の川崎茂花さんという方の作品です。こちらは2人展が終わったいまももちろん観ることができますね。

 

麦生漁港

話は変わりますが、お盆用のりんどう出荷が終わると、次はにんにく畑の準備になり、最後の3回目草刈りなどしているうちに、すぐ次の彼岸りんどうの大量出荷時期がやってきます。束の間の休息が8月下旬に1日だけ取れて、久慈市に出かけてきました。コンサートがあったのですが、せっかくなので釣りもしてきました。久慈の水族館もぐらんぴあのやや北にある麦生漁港を知人に紹介いただいて訪れました。外洋に面しているので波は高かったですが、幸いそれほどひどくはなく、小雨が降ったり止んだりのあいにくの空ではありましたが、投げ釣り、ブラーという新型の仕掛けを使ったアイナメ狙い、それにオキアミの撒き餌とサビキの小アジ類狙いの3本立てで、コンサートまでの短い時間でしたが、凝縮した忙しい釣りをしてきました。

 

麦生漁港の釣り

結果的には小さいアイナメとフグが1匹ずつ釣れただけで、そんなに魚影が濃いとは感じられませんでした。引き上げる頃になって、ルアー専門の上級者風の釣り客が来て竿を出していましたが、「北の方(八戸方面ということですね)から始めて南下して来ましたが、全然ダメ。今年は特に海が濁っているみたいだ」といった感想を言っておられました。私も岩手へ来て四半世紀経ち、三陸にも5回くらいは釣りに来ていますが、あんまり良い思いをしたことはなかったですね。子どもの頃の広島の瀬戸内海ではアイナメ、キス、カレイ、ベラ(ギザミ)が良く釣れましたし、市内の河川では河口近くでハゼ(ジェット天秤でゴカイ)、やや上流ではハヤやヤマベ(投げ浮き付き毛鉤セット)が面白いように釣れたものでした。市内の近くの川端で3人でハゼ100匹釣ったこともありました。いまでも釣り番組を聴いていると良い成果を挙げている話が放送もされ、やはり腕と釣り場選びなのかもしれませんが、ふと、小・中学生の頃の自分には、まだ自然というものと繋がった第六感覚があって、それが大人になって失われてしまい、頭で考えて釣りの努力をしようとすればするほど、人為的で自然から離れていった格好になっているのでは、とも思いました。

農業でもそうですが、作物や周囲の環境で生じていることは、その原因もプロセスもブラックボックスのようなもので、こうやったらこうなるのでは、という想像の中で作物と格闘しているようなものかもしれません。人間の認識に備わっている能力で物事をカテゴライズして判断していることで、現象面で辻褄が合っていても、それは物自体(Ding an sich)を語るものではない、というカントの学説の通りでしょうか。。

考えれば考えるほど、自然から遠ざかってしまう、のか。そんな物思いに耽るのも、脳や神経を休ませる休日ならではのことでしょうか。

だいたい昼間の畑作業は地元ラジオ局のワイド番組をポケットラジオで聞きながらですが、夜の作業場残業時に、WiFi環境(中継器で家から中継しています)ですのでスマホでYoutubeやPodcastを聞いていて、ハイデガーやヘーゲル、ヘーゲル左派、ニーチェ、安藤昌益など雑多に聴きながら作業しています。資本論こそ読んでいませんが、概要を耳で聞きながら、最晩年のマルクスにはSDGsのような発想もあったなど昨今の解釈も知ることもできました。こうした学びも農作業の日々の面白さでもあります。

 

アンバーホールステージ

お昼過ぎに慌ただしく釣りの片付けをして、久慈アンバーホールに出かけ、ベートーヴェンの交響曲2曲を聴いて来ました。仙台フィルのベートーヴェン交響曲連続演奏会の一環で、この日の曲目は8番と7番です。8番など滅多に演奏される曲ではなく、出だしの颯爽とした音色が大好きです。そして第7は言うまでもなくベートーヴェンのシンフォニーの中でも1、2を争う人気曲です。特に終楽章の木管の下降した後に上昇をしつつ弦が熱狂的に奏でるラストの部分は圧巻ですね。演奏もホールも素晴らしかったですよ。ちなみに、東北のプロのオーケストラはこの仙台フィルと山形交響楽団の2つだけだそうです。願わくば東北でもブルックナーやマーラーのシンフォニーを演奏してもらいたいものです。今年11月の長野・松本両市で、サイトウキネンによるマーラーの9番があります(先進地です!)。11月25日頃でちょうど寒天作業に行く移動時期にぴったり当たりますので調べてみましたが、18,000円のチケット代はちょっと尻込みしますね。。松本では懐かしい信州大学交響楽団によるマーラー1番を、ちょうどこの寒天出張移動時に聴くことができました。コロナ直前の秋でした。成人式に出た昔の地味な松本市民会館は、実に立派なホールに変身していて驚きましたが。

 

アンバーホール外観

久慈アンバーホールの外観です。実にアート的ですね。ただ久慈はやっぱりちょっと遠いです。。高速を使っても距離的には大回りになりますし、滅多には行けませんね。

 

思惟大橋発端部

その後、帰りはせっかくのドライブなので別ルートを選びまして(行きは岩手町の沼宮内から葛巻を通って久慈に至る最短ルートでした)、野田村の方へ南下し、道の駅のだで有名な「のだ塩ソフト」を食べました。そして、田野畑村を走行します。田野畑など滅多に来ることもありません。山地酪農の吉塚公雄さんがおられるところですね。当園とも縁のある東京のピアニスト富樫春生さんの盛岡でのライブに出かけた時に、「親戚です」(富樫さんの)といって紹介された方が吉塚さんで、田野畑からライブに来られて同席していたのでした。都会から岩手へ移住し独自の農法を追究される大先輩の方ですね。考え方や日々のご努力にも大変敬意を覚えるお方です。

その田野畑村に「思惟大橋」という橋があります。20年以上も前ですが、田野畑村のホームページ作成にかかわったことがありまして、その原稿作成のための素材として送られて来た資料の中に「思惟大橋」があり、頭に残っていました。名前も独特で、うら覚えで恐縮ですが、当地に赴任した転勤者がこの橋の凄まじい谷間の深さにたじろいで、橋から先に進もうか、やっぱり引き返そうかと「思案した」というところから来ているらしいです。盛岡の開運橋にも似たようなエピソードがありますね。思惟というのは明らかに哲学用語ですし、それに意表を突かれて記憶にあったのかもです。

田野畑の道の駅のそばにありますが、旧道と新道があるようで、私が通ったのは旧道の方でした。上の写真には新道の方の橋が見えています。

 

思惟大橋からのパノラマ

橋の半ばで軽トラから降りて谷底を見ました。確かにすごい絶景です。都会からいきなりこういう地理の場所に来ると、確かに怖気付いてしまいますかね。

やがて日暮れになり、盛岡のホームセンター等での買い物もあり、あとはまっしぐらに走って帰宅しました。楽しい休日でした。以前なら子どもたちを連れて来たところですが、もう休日は部活で埋められており、寂しい気もしますがひとり旅になりました。

現在は彼岸りんどうが終わって極晩生の品種に変わっています。にんにくの植え付けと小麦の播種も並行しています。にんにくと小麦の植え付けが終われば、今度はやっと稲刈りになります。10月に入ってからになるでしょうね。りんどうは10月下旬まで出荷が続きます。小麦の種まきには、播種機ごんべえを購入し使用していまして、次回の時にご紹介いたします。